【ビジネス活用】WBSを利用して作業工程やスケジュールを整理しよう

ビジネス活用
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仕事の予定を立てるのが苦手で、いつも期限に遅れたり急な依頼を周りにして怒られるんです・・・
中の人
なかの人

WBSをちゃんと理解すれば、その悩みは解消します。

プロジェクトの管理者には必須のテクニックであるWBSを覚えて、お仕事をスマートに遂行しましょう!

 
今回は「WBS」という作業工程管理、スケジュール管理の手法を紹介していきます。

ITエンジニアであれば広く利用されている手法の一つですが、IT以外のお仕事をされている方だと、馴染みのない人もいるかと思います。

手法や考え方を習得することで、ITに限らず様々なビジネスの場で活用することも可能であり、非IT系職種の方にも是非読んで頂ければと思います。
 
 

WBSって何?

WBS」とは「Work Breakdown Structure」の略称です。
「作業」などの仕事内容を「分解」して「構造化」したり「構成」をする管理手法です。

ある目的を達するために、必要になるプロセスやタスクを洗い出して細分化し、整理をしていきます。

IT業界では広く利用されており、顧客の要件に合う業務システムを開発する際に作業費用を算出する場合の作業量の根拠にしたり、開発スケジュールを作成する際に作業日数を試算するための根拠として使用されます。

一般的には、「WBS = スケジュール作成」とセットで扱われるイメージですが、WBS自体はプロジェクト全体の作業タスクの洗い出しや、作業単位の細分化を行うためのものであり、必ずしもスケジュールを作るために利用されるものではありません。

WBSで全体の作業を分解して構造化した個々の作業プロセスを時系列と担当者で並び替えすることで、それが作業スケジュールになるということにすぎません。

冒頭で紹介したように、このWBSはIT業界に限らず、プロジェクト全体の作業タスクやプロセスを論理的に分解して構造化することは様々なビジネスの場面で活用できます。
 

ある目的の到達に必要なプロセスを分解する

WBSの本質は、タスクやプロセスを列挙して適切な精度に分解して構造化することです。

例えば、メーカー系企業が新しい新商品を開発して、それを市場に流通させるといったプロジェクトで考えた場合、新商品の企画を始めるのをプロジェクトのスタートとし、市場に流通させるまでをプロジェクトのゴールと仮定します。

このプロジェクトのスタートとゴールの間には、実際には非常に多くの工程が必要になり、プロジェクトの規模によっては多くの人や会社が関わります。

何の予定も立てずに場当たり的に進めていては、いつ新商品が市場に流通するかもわかりませんし、このプロジェクトに誰がどれだけの期間で関わらないといけないかもわかりません。

WBSでは、ある目的やゴールを定義したら、まずそこに到達するまでに必要な工程を分析し洗い出します。

WBSで洗い出した作業工程単位で取りかかる日にちや担当者を決めて、担当者の日程や工程の難易度等を元に工程に着手する順番を決めていきます。

この過程を経て、初めてそのプロジェクトで必要になる期間や必要となる人数が把握できるようになります。

 

タスクやプロセスの精度と時間軸の単位を調整して様々な工程管理が可能

「WBS」では、最初に作業のタスクやプロセスを洗い出すことが必要になりますが、この精度はWBSの目的によって調整します。

例えば、作業全体が数時間で終わるようなものであれば、作業タスクは作業者のPC操作レベルの細かい作業内容までタスクとして扱います。
また、時間軸の単位は分単位です。

これぐらいのタスクの精度や時間軸の単位でWBSを実施することで、正確な作業手順書が出来上がります。
作業に必要となる時間も正確に見積もることができるようになります。

同様に、全体の期間が数ヶ月や一年にも渡るような大きいプロジェクトの場合も考えてみます。
この場合、個々のタスクは実作業レベルの細かい精度のものではなく、作業工程レベルのように大き目な精度でタスクを列挙します。
また、時間軸の単位も週単位や月単位などのざっくりとした日程感で予定を組んでいきます。

これでプロジェクト全体のスケジュールが出来上がります。
WBSでスケジュールを作成した結果、プロジェクトの納期に間に合わないと判明すれば、そのプロジェクトに関わる人員を増やし、複数のタスクを同時進行させて、スケジュールが前倒しできるように調整します。

このように、WBSを実施する目的に応じて、タスクやプロセスの精度、時間軸の単位を適切に調整することが必要です。
 

WBSの具体的なやり方

WBSの具体的なやり方や考え方について、以下で順を追って説明していきます。

今回の記事では、物理サーバーを調達して、そこにウェブアプリケーションを構築して稼働させるまでの工程をWBSの実施例として解説していきます。

尚、当ブログはIT技術ブログということもあり、ITを題材にしたWBSのやり方を紹介していきますが、WBSは冒頭でも説明したとおり、ITの分野に限った手法ではなく、あらゆるビジネスの現場で活用できます。

よってタスクやプロセスを洗い出して整理する対象は何でも結構です。

また、お仕事での活用だけではなく、例えばご自宅を引越しする場合の準備や計画を立てたり、ご自身の結婚式までの段取りを整理したりスケジュールを作るといった、プライベートな活動の場においても活用できます。

 

「タスク」と「プロセス」につい

少し余談になりますが、当記事では「タスク」と「プロセス」を同列に呼称していました。
ただ、IT技術者の視点でこの言葉を厳密に定義するなら、この2つの言葉は微妙に意味が異なります。

プロセス:作業の最小単位
タスク:プロセスをまとめた一塊の作業や工程

少なくてもコンピューター用語としては上記のように定義するのが自然です。

ただし、今回の記事で扱う「WBS」で言えば、どちらの言葉も同じように、「作業単位」や「作業工程」として使われています。

どちらかに寄せないと記事が書き辛いので、当記事では「タスク」に呼称を統一させていただきます。

 

ゴールまでのタスクを全て洗い出す

まずはゴールまでのタスクを全て洗いだし、そのタスクを作業リストとして列挙します。

尚、このタスクの洗い出し作業は、メモ帳や何らかのテキストエディタを開いてそこに書き出しても良いですし、Excelでも結構です。
また、もし複数人で会議の場で洗い出すならホワイトボードに手書きしても結構です。

今回の記事では、サーバーの調達に関するタスクから始まり、設定内容を予めドキュメントで定義したり、実際にサーバーに対してその設定を行うといった複数のタスクがあります。

まずは思いつくままそのタスクを洗い出しましょう。

  • 機器構成検討及び機器選定
  • 機器購入費用の社内承認
  • 機器発注
  • OS初期設定作業
  • Webサーバー設定作業
  • OS基本設定パラメーターシート作成
  • Webサーバー設定パラメーターシート作成
  • 機器キッティング、ラッキング
  • OS基本設定作業手順書作成
  • Webサーバー設定作業手順書作成
  • Webアプリ動作テスト
  • Webアプリ動作テスト仕様書作成
  • 本番環境リリース

すべてのタスクを洗い出しました。
タスクの順番はあとからきれいに並べ替えるため、今の段階では時系列は気にしなくて結構です。

前述した通り、タスクの精度、細かさはタスクを洗い出す目的に応じて変わります。

今回の記事では日毎で工程やスケジュールを作成していきますが、特定の作業に対する作業手順書作や作業スケジュールを作るのであれば、タスクの精度は分毎や時間毎で考えます。

一年や二年といった長い期間に対するスケジュールを作るなら一ヶ月毎や四半期毎の精度でタスクを考えます。

タスクの精度が細かくなるほど、作成するスケジュールの信頼性は上がり、タスクの精度が大きくなるほど、作成するスケジュールの信頼性は下がります。

 

洗い出したタスクに所要期間を設ける

次は、前項で洗い出した個々のタスクに対して、そのタスクに着手して完了するまでの日数(所要期間)を書き足します。

今回は日毎のスケジュールを作成していくため、タスクに設定する最低所要期間は1日です。
また、機器を購入して、それが届くまでのリードタイムも所要期間として考慮します。

尚、実際に人が手を動かして作業をする場合は、この所要期間を「工数」と呼ぶ場合もあります。
但し、厳密に言えば、「工数」=「所要期間」ではないため注意が必要です。

工数(こうすう)とは?
IT業界では一般的な言葉ですが、技術者一人が作業をする場合の作業量を定量化した数字です。
日単位の作業量であれば「人日(にんにち)」、月単位の作業量であれば「人月(にんげつ)」といった単位で表現します。
例えば技術者がとあるタスクに専念して終わらせるのに三日間掛かるのであれば「3人日」。
三カ月掛かるなら「3人月」と数えます。
尚、技術者は複数の仕事を平行して進める場合もあるため、工数は単純な所要期間ではなく、あくまでそのタスクに専念して作業した場合に終わらせることができる所要期間になります。
この「工数」×「作業単価」で作業費用の算出根拠にしたり、プロジェクトの作業ボリュームを定量化します。

前項で洗い出したタスクに対して、以下のように所要期間を書き足していきます。

タスク名 所要期間/日 備考
機器構成検討及び機器選定 5
機器購入費用の社内承認 3
機器発注 14 納品をタスクの完了とする
OS初期設定作業 1
Webサーバー設定作業 1
OS基本設定パラメーターシート作成 2
Webサーバー設定パラメーターシート作成 3
機器キッティング、ラッキング 1
OS基本設定作業手順書作成 2
Webサーバー設定作業手順書作成 2
Webアプリ動作テスト 2
Webアプリ動作テスト仕様書作成 3
本番環境リリース 1

これでタスクの一覧とタスクごとの所要期間のリストができました。

 

タスクに担当者を設定する

プロジェクトを一人で遂行する場合もあれば、複数人で進める場合もあります。
今回の例では複数人が関わるプロジェクトを想定し、タスクごとに担当者を設定していきます。

タスクごとに担当者が異なれば、そのタスクは同時に進行できるようになり、プロジェクト全体の所要期間の短縮が可能になります。
尚、今回の例では3名でプロジェクトを進めます。

タスク名 担当者 所要期間/日 備考
機器構成検討及び機器選定 山田 5
機器購入費用の社内承認 山田 3
機器発注 山田・メーカー 14 納品をタスクの完了とする
OS初期設定作業 佐藤 1
Webサーバー設定作業 加藤 1
OS基本設定パラメーターシート作成 佐藤 2
Webサーバー設定パラメーターシート作成 加藤 3
機器キッティング、ラッキング 山田 1
OS基本設定作業手順書作成 佐藤 2
Webサーバー設定作業手順書作成 加藤 2
Webアプリ動作テスト 山田 2
Webアプリ動作テスト仕様書作成 山田 3
本番環境リリース 山田 1

これで各タスクに対して、所要時間と作業担当者が割り当てられましたが、まだタスクの時系列は定義されていません。

この状態では、プロジェクト全体の作業量や誰がこのプロジェクトに関わるのかはわかりますが、個々のタスクに対して誰がいつ開始して、プロジェクトがいつ終わるのかまではわかりません。

次項では、このタスクの一覧を元にして、実際にスケジュールを作成してみます。

 

作業の時系列を整理してスケジュール表を作成する

当項では、前項でまとめたタスクの一覧を元に、スケジュール表を作成していきます。

個々のタスクには担当者が設定されており、最低の所要時間は一日です。
よって同じ日に同じ担当者は異なるタスクを進行できないこととします。
尚、機器発注後の納品までのリードタイムは例外とします。

また、スケジュール表では、各タスクの着手日が近い順番で上から下に並べた方が、各タスクの時系列が直感的でわかりやすくなるため、このスケジュール表を作成しながらタスクの順番も並び替えます。

各タスクごとに、日単位で所要期間をもとにセルを塗り替えますが、土日は作業ができない前提であり、当スケジュール表では土日のみセルの色を変更しています。
各タスクは平日のみ進めることができる前提です。
※当サンプルでは祝日は省略しました。

あと、各タスクには番号を採番しておくことが必要です。
このスケジュールをもとにプロジェクトを進めるにあたり、個々のタスクについて話をする場合に、番号が無いとタスク名を相手に伝えることが必要になり、タスク名を提示するのが面倒だったり、間違いなども誘発する可能性があります。
一意の番号で指定できる方が合理的です。

これらのをもとに作成したスケジュール表が以下になります。

WBSをもとに作成したスケジュールサンプル

スケジュールサンプル※クリックで拡大します。

洗い出したタスクをもとにスケジュール表に落とし込むことで、プロジェクト全体の予定終了日が明確になり、各タスクの前後関係がわかりやすくなります。

今回作成したスケジュールでは、本番リリースが12月8日となっていますが、もしこの日程よりも前倒しにしてリリースしたい場合は、個々のタスクの担当者を組み替えたり、担当者を増員することが考えられます。

しかし、詳しくこのスケジュールを見ていくと、機器を発注して納品されるまでのリードタイムを短くすることはできず、機器納品後に行うタスクは実機への設定作業が大半であり、それらのタスクは前のタスクが完了しないと次のタスクを進めることはできず、異なる担当者が同時進行をすることはできません。

よって担当者を増員しても本番リリース日を早めることができないことがわかります。
リリース日を前倒ししたければ、発注前のタスクの所要期間を短くするように山田さんに頑張ってもらうしかありません。

スケジュール表を作成して各タスクを時系列で整理したことで、プロジェクト全体の工程を正確に分析できるようになりました。

このようにプロジェクト全体の予定を立てたり、必要になる人員を洗い出すにあたり、適切なタスクを元にしたスケジュールの作成は欠かせないのが理解していただけるかと思います。

尚、このようなスケジュール表は、一般的には「ガントチャート」と呼びます。

 

ガントチャートって何?

作業予定を視覚的に分かりやすく表にしたものです。
Wikipediaによると以下です。

ガントチャート-Wikipedia
プロジェクト管理や生産管理などで工程管理に用いられる表の一種で、作業計画を視覚的に表現するために用いられる。棒グラフの一種でもあり、横棒によって作業の進捗状況を表す。

「今回作成したスケジュール表」=「ガントチャート」です。
工程管理が一般的ではない職場においては、「スケジュール表」と呼称したほうが周囲の人たちには伝わりやすいかと思いますが、「ガントチャート」という名称も知識として理解しておいてください。
 
 

最後に

今回の記事では、初めて工程管理をしたり、プロジェクトのスケジュール作成を任されることになった人にむけて、「WBS」の考え方ややり方を簡単に紹介しました。

「WBS」は手法であり、「ツール」でもあります。
知識として学ぶだけではなく、学んだことを実践して活用していかないと意味がなく、タスクの洗い出す精度も上達しません。

大きく困難なプロジェクトや壮大な目標であっても、実態は小さなタスクの積み重ねにすぎません。
個々のタスクの終わらせていけば、何れ完了させることができるはずです。

「WBS」を知ることで、そういった思考法も自然と身につきます。

今回の記事をきっかけにして、積極的に「WBS」を試していただけると嬉しいです。

今回も読んでいただきありがとうございました。
それでは皆さまごきげんよう!

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