初めてのデータセンター|立地とファシリティからみた選び方のポイントをわかりやすく解説

サーバ・ネットワーク
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今回の記事では、初めて「データセンター」を選定する場合の「立地」と「ファシリティ」から見た選び方のポイントと、必ず知っておきたいデータセンターの基礎知識を紹介していきます。

尚、当記事では、最新のIT技術に由来したファシリティなどではなく、新旧のどのデータセンターでも共通するような、より汎用的な選定ポイントや基礎知識に着目して解説します。
 
 

データセンターとは

始めに「データセンター」について簡単に解説します。

「データセンター」とは、サーバー機器やネットワーク機器を設置して運用することを目的とした建物です。

データセンターを運営するデータセンター事業者は、自データセンターのフロアに並べたサーバーラック内のスペースを顧客に貸し出し、そのラック内に顧客から預かったサーバー機器やネットワーク機器を設置し、顧客に代わってそれらの機器の運用を代行します。

企業は自社のサーバー機器やネットワーク機器をデータセンターに設置して運用することにより、サーバー機器を管理するための人員的な負荷を軽減し、サーバー機器の稼働に特化した専用設備の確保が不要になります。

利用するサーバーラックの台数ごとに利用費用が発生します。
また、データセンターごとに固有のオプションサービスがあり、それらのオプションサービスを利用することで、利用費用も加算されていきます。

データセンターは、企業の事業活動における生命線であるサーバー機器やネットワーク機器を安全に運用するにあたり、無くてはならないサービスの一つです

 

データセンターを利用する「メリット」とは

サーバー機器やネットワーク機器を自社の建物内にサーバールームを作り運用することもできますが、データセンターを利用することにより以下のメリットがあります。

  • 専用の運用オペレーターが24時間365日の監視を行ってくれる。
  • 生体認証など様々なセキュリティ設備で機器が守られる。
  • 冷却設備や電源供給設備が冗長化され故障の心配がない。
  • 高い耐震性や免振設備により自然災害にも非常に強い。
  • 高速な通信回線と直結できる。

これらを自前で用意するのは非常にコストが掛かります。

データセンターでは、上記の高付加なサービスを低価格で提供しています。
 

「ハウジング」と「ホスティング」とは

データセンターが提供するサービスには、一般的に「ハウジング」と「ホスティング」があります。

今回の記事では、主に「ハウジング」を前提として解説をしていきますが、「ホスティング」も大変便利なサービスです。
データセンターを利用する場合に、必ず知っておかないといけない用語です。

以下でそれぞれ解説していきます。

「ハウジング」とは
冒頭の「データセンター」の説明でも記載したとおり、顧客の資産であるサーバー機器やネットワーク機器をデータセンター内のラックに預けて運用するサービスです。
どのデータセンターでも必ず提供しているサービス形態です。
「ホスティング」とは
前述した「ハウジング」では、顧客が所有する機器をデータセンターに持ち込みますが、「ホスティング」では、データセンター事業者がサーバー機器やネットワーク機器を調達し、顧客は利用費用を支払って、データセンター事業者が所有する機器を利用するサービスです。
よって、「ハウジング」で必要になる「ラック利用費用」と併せて「機器利用費用」も必要になります。
機器の故障時は、所有者であるデータセンター事業者が対応をします。
顧客は機器を利用するだけで所有はしないため、固定資産として計上する必要はありません。

上記で説明したように、「ホスティング」の方が機器故障時の対応が楽であり、資産計上も不要になることから、サーバーの管理に伴う労力はより軽減できます。
 

「電力会社系」「通信事業者系」「その他」運営母体による特徴

データセンターでは、その運営会社の母体企業によって特色があります。
一般的には「電力会社系」、「通信事業者系」があり、それ以外にはコンピューターメーカーや大手商社、大手IT企業など様々な業態の企業が運営しています。

電力会社系データセンターの特徴
国内の各地域に分かれている電力会社の子会社がデータセンター事業を運営しているケースです。
電力会社系データセンターの特徴としては、やはり電力の安定供給にあります。
データセンターでは、サーバーなどの電子機器への電力供給や、建物そのものを維持するためにも膨大な電力の供給が必要になります。
電力会社が運用している場合、電力会社が所有する発電所や変電所から電力を直接供給していたり、冗長化された電力供給経路が用意されているなど、他社には真似できないファシリティを提供しています。
通信事業者系データセンターの特徴
NTTグループやKDDIグループなどの通信サービスを提供している企業が運営しているケースです。
通信事業者系データセンターの特徴としては、大容量で高速な通信回線の利用が可能な部分にあります。
建物は通信事業者が保有する大容量の通信回線網やIX(Internet Exchange point)と直結し、品質の高い高速なインターネット接続が実現できます。
インターネットを介したサービス提供や、拠点間での通信において、高速、大容量の通信回線を利用できることは非常に重要です。
その他のデータセンターの特徴
NECや富士通などの国内コンピューターメーカーや、伊藤忠などの商社、SCSKなどのシステムインテグレーターなど様々な企業もデータセンターを運営しています。
各データセンターでは、運営企業の特色を生かしたサービスを提供しています。

参考として、IDCC(日本データセンター協会)のHPに掲載されているデータセンターの一覧のリンクを紹介しておきます。
尚、リンク先の一覧にある「ティア」とは、データセンターの安全性の格付けです。
1から4まであり、4が最も厳しい安全基準を満たしていると扱われます。

 
 

データセンターの「立地」による選定ポイント

データセンターを選定するにあたり、建物の所在地の「立地条件」は最も重要です。
建物内の設備は改善される場合がありますが、建物の所在地は変わることはありません。

その所在地によって、自然災害に対するリスクの大きさや、何かトラブルなどがあった際に駆け付ける場合の容易さ、外部拠点から相互に通信を行う場合の通信速度が変わってきます。

データセンターを選定する場合、まずは「立地」に着目して要件に照らし合わせながら選ぶ必要があります。

 

ハザードマップで自然災害のリスクを考慮する

各地域の自然災害のリスクについては、それぞれの自治体が公開している「ハザードマップ」から確認することができます。

掲載内容は自治体ごとに差がありますが、まずは、データセンターの所在地を確認し、ハザードマップで自然災害のリスクがある土地か否かを確認しておくことが必要です。

尚、自然災害のリスクや影響に関する資料はデータセンター運営事業者から提示される場合もありますが、中立的な内容とは限らないため、自治体が公開しているハザードマップと併せて確認したほうがよいでしょう。
 

「水害」の可能性の有無

データセンターでは、河川の氾濫や集中豪雨などにより、周辺の土地が浸水した場合でも影響を受けないように対策がされている場合が多いです。

例えば、万が一建物が浸水した場合に備えて、非常用電源設備などの重要設備は建物の地下や1階など低階層を避けて設置するような設計になっていたりします。

それでも、すべてのデータセンターがそのような設計になっている訳ではなく、また、いざ建物が浸水した場合は何らかの障害を誘発したり、オペレーターによる有人監視サービスに影響が及ぶ可能性があります。

よって、浸水などの水害の可能性が低い土地を選定することが必要になります。
 

「地震」の頻度と「地盤」の硬さと「断層」の有無

自然災害のなかでも地震は、建物の損壊など致命的な状況になり得るため、立地の選定においても重要視する必要があります。
建物自体の地震対策については、後述する「データセンターのファシリティ」の項で解説しますが、まずは立地における地震対策の確認ポイントを解説していきます。

まずは、そのデータセンターの所在地が地震のリスクがどれだけ存在する土地なのかを確認しておく必要があります。

日本の国土は大きな海洋プレートが複数交わる場所に位置しており、地震の発生頻度は非常に高く、地震の影響を受けない土地はほぼ存在しません。
参考までに気象庁のウェブページで公開されている地震発生における分布図を以下に掲載致します。

日本付近で発生した地震の分布図

1960年から2011年にかけての日本付近で発生した地震の分布図 -気象庁-

上記の分布図を見れは一目瞭然ですが、地震は国土の殆どの土地で発生しています。

国内全域で地震の影響を回避することができないのであれば、併せて考慮する必要があるのが、地域ごとの「地盤の硬さ」です。

地盤が硬い土地では地震の揺れの伝わり方は速くなり、地盤の柔らかい土地では、地震の揺れの伝わり方は遅くなります。
地震の揺れの伝わりが遅くなることで、震度は増幅され大きくなると言われています。

また、それにより、地震波の周期の波が建物の揺れやすい固有周期と一致して建物を大きく揺らす「共振現象」も発生しやすくなりなります。

よって、地盤の硬い土地に建設されていることは非常に重要です。

このように、地盤の硬さも大事ですが、同様にチェックしておくことが必要なのは、「断層」です。

「断層」は地面のずっと下にある地盤の裂け目になります。

地震では地面を揺らし、その上に建つ建物を揺らしますが、その地面の下に断層が走っている土地では地面がその断層に沿って裂けたり、地面自体の位置が移動してしまうことがあります。

建物を強固にして、強い地震の揺れにも耐えるように建築したとしても、その建物が建つ土台の地面自体が裂けたり移動してしまうことになれば、建物が無傷でいられることは難しいですし、建物が傾いてしまったり、最悪の場合は倒壊もあり得ます。

また、地震発生時の揺れの大きさも、断層に近いほど大きく、また、断層が地震の発生源になることも多々あります。

よって、予め断層の位置を確認し、断層の真上に位置している立地は必ず避けるようにし、また、可能な限り最寄りの断層から離れている土地に建つデータセンターを選定する必要があります。

断層の位置もその地域のハザードマップなどで確認できるかと思いますが、これまでの研究や調査で判明している断層がすべてではなく、近年も新しい断層が次々と発見されています。

よって、現時点では断層がないとしても油断はできませんが、少なくても最新の断層情報は必ず確認しておく必要があります。

 

その他の自然災害リスク

その他の自然災害リスクとしては、例えば「津波」です。
東日本大震災では未曾有の大きな被害が発生しましたが、大地震のあとに発生した大津波がその被害を引き起こしました。

津波のリスクがあるのは、比較的海に近く、また遠浅の海外があり、海抜高度の低い地域です。
当然そういった立地に建つデータセンターは避けたほうがよいでしょう。

また、逆に山が近い場合は、土砂崩れが考えられます。
現実的に、山の麓にデータセンターが建っているケースはなかなかないとは思いますが、土砂崩れの発生リスクもハザードマップで確認が可能です。

他にも大雪、台風や竜巻、落雷といった自然災害もあります。
これらの災害自体で建物が崩壊するようなダメージを負うことは考えにくいですが、地域の通信回線が切断されたり、電力供給が止まるといったことは起こりえます。
また、データセンターで働くオペレーターの出勤ができなくなり、サーバーの運用に支障をきたすことはあるかもしれません。

地震のように重要視するほどのものではありませんが、やはり気には留めておいてください。
 

交通の便の良い立地を考慮する

データセンターはそれほど頻繁に足を運ぶ施設ではありませんが、だからといって交通の便が悪い立地のデータセンターを選んでしまった場合、イザというときに苦労します。

データセンターの立地を東京や大阪などの大都市からの物理的な直線距離で判別しがちですが、直線距離ではさほど遠くなくても、公共交通機関のアクセスが悪く、移動にとても時間が掛かる地域に建つデータセンターも多くあります。

逆に、物理的な直線距離は遠くても新幹線の乗車駅の近くにあったり、飛行機で移動する必要があっても空港から比較的近い場合など、公共交通機関のアクセスが良好な地域であれば、現地に行かないといけない事態が発生したとしても、大きな心理的、肉体的負担にはなりません。

また、データセンターでは、データセンターに機器を預けている顧客以外にも、その顧客の業務システムを運用しているSIerが現地で作業する場合や、サーバー筐体などのハードウェアベンダーが機器の故障などで現地に駆け付ける場合もあります。

その場合の、短時間で移動できる場所にある方が迅速に対応してもらえたり、作業費用の見積金額も安くなる可能性もあります。

このように、データセンターの所在地とその最寄り駅を確認し、交通の便が悪くないか、移動する際に心理的、肉体的な負担は少なそうかを確認しておく必要があります。

 

本社や各拠点との通信経路の距離を考慮する

データセンターを立地を選定するにあたり、北海道や沖縄など、極力現在の主要拠点から離れた場所に建つデータセンターを選んだほうが、BCPにおける災害対策の観点から有効だろうと考えがちですが、平時での利用に支障をきたす場合があるため、BCPと常用するサーバー群の外部管理を混同することはせず、分けて慎重に検討することが必要です。

まず、極端に遠方の土地に建つデータセンターで一番問題になるのは、「通信速度の遅さ」です。

いくらデータセンター側でIXや主要キャリアのバックボーンと直結して高速、且つ大容量の通信回線が利用できたとしても、通信経路の物理的な距離を無視することはできません。

通信経路の距離が長ければ長いほど、データのやり取りには時間が掛かるようになります。

例えば、本社などの主要拠点を北海道にかまえる企業が、沖縄のデータセンターを利用しようとする場合、データセンターにある各機器との通信を行う度に、日本列島をデータが横断することになります。

例えば、極端に離れていないデータセンターであれば、Pingの応答速度は数十ミリ秒程度なのが、極端に遠方になると100ミリ秒以上になる場合もあります。

このミリ秒の違いは、人間の感覚から言えば気付かない程度の僅かな差ですが、コンピューターの世界では大きな差になります。
クライアントの端末にインストールするタイプの業務アプリケーションでは、ループ処理のなかで1秒間の間になんどもデータベースを参照するような処理を実装している場合もあり、数十ミリ秒の通信速度の低下が、大きな動作の遅さに繋がります。

また、DR(disaster recovery)の一環として、サーバーやデータベースのバックアップデータをネットワークを介して別拠点に転送しようとする場合でも、Pingレベルでの通信速度の遅さが転送時間に大きく影響します。

よって、主要拠点とデータセンター間での通信速度は非常に重要な選定ポイントになります。

また、主要拠点とデータセンターとの物理的な位置関係によっては、物理的な拠点間の距離以上に通信経路上の距離が延びる可能性もあるため注意が必要です。
具体的には過去に当ブログの以下の記事で紹介しています。

この記事で使用した説明用のイメージ画像も転載しておきます。

例えば、沖縄と福岡であれば、物理的な拠点間の直接距離はそれほど遠くはありません。

拠点間VPN等の広域通信イメージ

ただし、通信経路も同様に最短距離になるとは限らず、最悪の場合は以下のイメージのように、一度東京を必ず中継することになる場合もあります。

拠点間VPN等で広域通信をする際に実際の経路イメージ

何故このような通信の迂回が発生するのかについては、以下のリンク先にある総務省の資料(PDF)を参考にしつつ簡単に解説します。

第●次地域IXブームの到来?!~地域の地域による地域のためのIX~ 総務省(PDF)

インターネットの通信は、契約者に対してインターネットとの接続を提供するISP(Internet Service Provider)がIXで相互に接続されて、目的の通信先までデータを運びます。

上記の資料(PDF)の9ページ(ページの表記は8ページ)でも解説されていますが、2021年7月時点でISPと接続されるIXの74パーセントは東京です。
次いで大阪が24パーセントであり、全体の98パーセントを占めています。

ネットワークの効率的な利用の促進や災害時などの影響を分散するために、昔から所謂「地域IX」を増やすことの必要性が叫ばれていますが、実際にはなかなか進んでいないのが実情のようです。

よって、その拠点ごとの地域や契約するISP、データセンターなどにより、通信経路は大きく迂回する可能性があり、拠点間の直線距離と通信速度(応答速度)は比例しません。
こちらを頭に入れたうえで、データセンターを選択する必要があります。

尚、この通信経路については、仕様などが公開されているものではなく、その時の状態によっても変わるものでもあり、データセンターに質問したところで明確な回答をもらえることは少ないですが、既存の顧客における実例として差支えが無い程度に教えてくれることはあります。
出来れは予め調べられる範囲で確認しておきましょう。

 
 

データンセンターにおける「ファシリティ」による選定ポイント

当項では、データセンターの「ファシリティ」における選定ポイントを紹介していきます。

尚、「ファシリティ(facility)」という言葉は複数の意味を持ちますが、データセンターにおける「ファシリティ」とは、建物自体の設備を指して使われます。

データセンターは、サーバーなどの重要な電子機器を集約して管理、運用するための施設であり、その目的に特化した様々な設備が用意されています。
これらの設備(ファシリティ)は、データセンターを選定するうえで重要な比較対象になります。

これらも必ず覚えておいてください。
 
 

建物の耐震性や免震設備を考慮する

データセンターのファシリティとして最も重要なのは、地震に対する強さです。

よって、建物の地震対策に自信があるデータセンターであれば、必ずアピールポイントとしてウェブサイトやパンフレットなどで紹介されています。

よく聞く言葉で、耐震構造、免震構造、制震構造といったものがあり、データセンターを選定するうえでは、必ずこの言葉の違いを理解しておく必要があります。
それぞれの意味合いを簡単に解説していきます。

耐震構造
「耐震構造」とは、建物が地震の揺れを逃がすことはせず、地震の揺れを真っ向から受け止めて耐えることができるようにする建築構造です。
木造の建物で言えば「筋交い」、鉄骨造の建物で言えば「ブレース」と呼ばれる、柱を補強するため補強材を取り付けて、地震の揺れで建物が崩壊しないようにします。

  • 地震の揺れを軽減するものではない。
  • 建物の上階にいくほど強く揺れる。
  • 強い地震では建物が損傷する可能性がある。

「耐震構造」では、建物が崩壊を防ぐことには繋がりますが、地面の揺れを建物が軽減することはないため、非常に強い地震が発生した場合は、建物の外装が損傷したり、建物の内部の設備が破損するといった事態になる可能性があります。

よって、データセンターを選定するうえで、「耐震構造」だけを取り入れた建物であれば、地震対策としての安全性は不十分だと言えます。
 

免震構造
「免震構造」とは、建物の土台に免振装置を設置し、その免振装置が地面の揺れを吸収して、建物自体が揺れないようにする建築構造です。
免振装置は、平常時に建物を自体を浮かせて支え、地震発生時には揺れを九州するための特殊なゴムと、ゴムで吸収した揺れを最終的に抑え込むためのダンパーから構成されています。

  • 地震の揺れを大きく軽減する。
  • ゴムは経年劣化するため将来交換が必要。
  • 横揺れには強いが直下型地震で発生する大きな縦揺れには効果がない。

「免震構造」では、地震による地面の揺れを、建物の土台が吸収してくれるため、強い地震が発生しても、建物自体は殆ど揺れなかったといった実例が多く存在します。
免震構造を取り入れたデータセンターでは、当然この免振設備も自データセンターのアピールポイントになるため、私自身も過去には、実際に周辺で大きな地震が発生した際の建物内の監視カメラの映像を見せてくれたデータセンター事業者も居ました。

尚、免震構造はあくまで横揺れにのみ効果があり、縦揺れには効果が無いと前述しましたが、建物が大きくダメージを受けるのは主に地震の横揺れが原因であり、縦揺れ自体はそれほど重要視をしなくても良いと言われています。

因みに、免振構造の建物では、地面を揺れを免振装置が吸収するために、建物の周辺の地面は数十cmから1m程度の空洞が必要になります。
例えばお城のお堀のように溝状になっていたり、稼働する鉄板などで一部を覆い地繋ぎにしています。
慣れてくると、周辺の地面を見ることで、この建物が免振構造なのかもわかるようになります。

古いデータセンターでは、耐震構造しか採用されていない場合もあり、注意が必要です。

あと、建物自体が免震構造になっていないが、サーバールームのフロア全体が免震構造になっているケースや、ラックが設置されている床部分のみが免震になっている場合もありますが、最も望ましいのは建物自体の免震構造です。

必ず免振構造を採用したデータセンターを選定してください。

■免震構造で採用される免震ゴムの参考リンク -ブリジストン-

免震ゴム(建築用) | 株式会社ブリヂストン
ブリヂストンの免震ゴムについてご紹介します。製品の特長、ラインアップ、お問い合わせ先などをご覧いただけます。

 

制震構造
「制震構造」とは、建物内に錘やダンパーなどを取り付け、地面の揺れを建物が吸収する建築構造です。
地震では一般的に建物の上階ほど地震の揺れが増幅され強く揺れますが、制震構造を取り入れることによって、揺れが上階ほど大きく増幅される現象を抑えます。
高層建築において欠かせない建築構造です。

  • 地震の揺れを自体を軽減するものではない。
  • 建物に後付けで設置できて免振設備ほど費用は掛からない。
  • 耐震構造と組み合わせて取り入れるのが効果的。

「制震構造」では、それ自体が地震による建物の揺れを大きく軽減するものではなく、揺れの増幅を防ぐ目的であり、大きな建物では初めから組み込まれている場合も多く、データセンターの選定においては、「制震構造」自体をそれほど気にしなくてもよいかと思います。

ただ、建物の地震対策として「制震(制振)」という仕組みがあることを知っておくことは重要です。

上記の説明を踏まえて、データセンターでは必ず「免震構造」の建物を選定しておくことを強くおススメします。

 

通信回線の設備や引き込み可能回線を考慮する

データセンターでは、通信回線に関する設備も非常に重要な選定ポイントになります。

前述した通信事業者系のデータセンターであれば、自社が自グループが所有する大容量の通信ネットワークのバックボーンと直結して、10Gbpsなどの高速な広域網の構築が可能だったり、大手IXとの相互接続が可能とアピールしていたりします。

通信速度の面では、データセンターでは様々な機器がネットワークを介して通信することになるため、最大でどれぐらいの速度(容量)の通信が可能なのかは非常に重要です。

現時点では不要であっても、将来的に高速な通信回線に切り替えたいとなった場合に、対応できるようにしておく必要があります。

また、相互接続しているIXが多ければ、その分そのデータセンターが他の拠点と通信をする際の通信経路の迂回がへり、効率よく通信ができるようになります。

通信速度以外にも、災害対策としても通信回線設備によって違いがあります。

地震などの災害時においては、通信回線をデータセンターに引き込んでいる物理的な接続部分が損傷して通信ができなくなる事態は起こり得るのですが、例えばNTT系のデータセンターでは、地中深くに掘られた通信回線専用のトンネル(とう道)がデータセンターに直結しており、建物への回線の引き込み設備自体が非常に災害に強い作りになっているものもあります。

NTTとう道をはじめとする優れたネットワーク環境 – NTTデータのデータセンター紹介ページの参考リンク

NTTデータのデータセンター&クラウドサービス
後、データセンターが元々用意している通信回線以外にも、必要によって他の通信回線事業者の回線を引き込んで利用したいケースなども発生します。 大体のデータセンターでは「キャリアフリー」で自由に他の通信回線事業者の回線を引き込めるはずですが(例えばKDDI系データセンターにソフトバンクの通信回線を引くなど)、予め確認はしておいたほうがよいでしょう。  

消火設備を考慮する

データセンターでは、大量の電子機器を稼働させている関係上、水を使用する消火設備は使用できません。
万が一火災が発生した場合は、水を使わずに火を消化する設備が必要です。

一般的にデータセンターで用意されている消火設備は、「不活性ガス消火設備」です。

「不活性ガス」とは、他の元素や化合物と容易に化学反応をしないガスであり、消火設備で使われるのは「二酸化炭素」や「窒素」です。

火災で燃焼するには酸素が必要になりますが、火災が発生したフロアに大量の不活性ガスを放出し、それによりフロア中の酸素濃度を下げて火を消化します。

水や特殊な消火剤を散布しないため、電子機器にダメージを与えることもありません。
電子機器などを扱う環境において最適な消火設備です。

ただし、火災が発生したフロアでガスが充満してとどまらないと消化に至りません。

後付けでこの消火設備を設置した建物の場合、この消火設備を使用する建物の設計になっていないがために部屋やフロアに隙間が多く、いざ消火設備を動かしてもガスが隙間から漏れてしまい消火に至らないといった事態も起こり得ます。

予めしっかり確認をしておきましょう。

 

非常用電源設備を考慮する

データセンターにおいて非常に重要なのは、サーバーなどが設置されているラックに対して、安定した電力を供給することです。

企業が自前で運用しているサーバールームでは、掃除のおばさんが誤ってサーバーの電源を抜くといったジョークもありますが、データセンターでは万が一の電源消失もないように、二重、三重に対策が取られています。

まずは、建物自体の受電設備をチェックします。
データセンターでは大量の電力を必要とするため、元々近くの変電所から建物の受電盤に直接引き込んでいる場合も多いのですが、その変電所から建物の受電盤までの経路の電線が切れたり、変電所が停止したり、受電盤が破損するなどでした場合、建物に対して電力の供給ができなくなります。

それでは困る為、更に別の変電所から建物内の別の受電盤に引き込み、受電設備や受電元、受電経路を冗長化しているデータセンターも多くあります。

電力系企業が運営するデータセンターの場合は、当然この電力供給に関する設備や経路は優れており、非電力系データセンターと比較した場合に高い優位性があります。

次にチェックするのは、受電設備からラックまでの経路(系統)の冗長化です。
受電設備から末端であるラックまでは、UPSなど幾つかの機器を介しますが、その系統も冗長化されている必要があります。

ラックに設置したサーバ筐体の電源ユニットが冗長化されていれば、ラックに引き込まれた異なる系統の電源に冗長化された電源ユニットを繋ぐことで、受電設備からサーバーまでの電源供給経路が冗長化された状態になります。

次にチェックが必要なのは、万が一建物に対して電力供給が途絶えた場合の非常用電源設備です。
だいたいどこのデータセンターもそのような場合に備えて、自家発電装置を設置しています。

燃料は備蓄している軽油などを使用し、三日程度は外部からの電力供給を受けなくてもラックに電力を送り続けることができるように備えています。

数日で備蓄している燃料は無くなるため、その後は、データセンター運営事業者のグループ会社と連携して燃料の優先供給を受けたり、災害時には優先して燃料の供給が受けられるようにエネルギー系企業と契約を結んだうえで、外部から燃料を供給してもらいながら、本来の電源供給ルートが復旧するのを待ちます。

このように、電力供給の冗長化や災害対策は各データセンターが工夫をこらしているポイントの一つです。
必ず確認しておきましょう。
 

ラックの冷却設備を考慮する

サーバーは高い処理性能が求められ、処理性能が高いサーバーほど発熱量も大きくなります。
サーバーは室温の涼しい環境に設置したうえで、筐体内の温度が上がり過ぎないよう、常時冷却することが必要です。

最近のデータセンターに入ったことのない人や、企業内の自前のサーバールームしか知らない人のイメージでは、データセンターのラックを収納しているフロアではエアコンでフロア全体を冷却しており寒いと思われているかも知れませんが、実際にはそれほど寒くないです。

現在主流の冷却方式は、床下からラックに対して冷気を送り込み、機器が発生させた熱をラックの外(室内)に排熱します。
排熱した温かい空気は天井などに送られるようになっています。
エアコンで部屋全体を冷却する方式より効率的であり、消費電力も抑えられています。

よって、サーバールーム自体は昔ほど寒くはありません。

どこのデータセンターでも、エアコンなどの冷却設備は冗長化を行い、停止することがないように対策を取っていますが、新しいデータセンターほど効率的な冷却方式で設計されています。

サーバールーム全体が極端に冷却されている場合は、現地での長時間の作業は体調にも影響することもあるため、可能な限り効率的な冷却設備、冷却方式を取り入れたデータセンターを選んでおきたいです。

 

ラック増設時の制約次項を考慮する

一般的なデータセンターで使用しているサーバーラックは、「19インチラック」が使われています。
19インチラックは42U(Unit)の設置スペースがあり、1Uサイズのラックマウントサーバーであれば、最大で42台設置することができます。
※実際には、機器と機器を密着して設置してしまうと機器から発生した熱を排熱できないため、適度に空きスペースを設けながら設置します。

データセンターを利用するようになると、設置した機器が減ることはあまりなく、増えていくことが大半です。
当初は契約したラック内のスペースに余裕があっても、機器が増えていくことで、何れ空きスペースが足りなくなります。

その際にはラックの追加契約が必要になりますが、その場合に、運用に支障を来たすような制約が無いかは事前に確認しておきます。

ラックを追加する場合は以下について確認が必要です。

隣のラックが利用できるか
ラックを追加する場合、現在契約しているラックの隣の空きラックを使いたいのは当然ですが、データセンターではラックごとに顧客に貸し出すため、隣のラックが空いているかはわかりません。
隣接するラックが空いていない場合は、離れた場所にあるラックを借りることになりますが、その場合は両方のラック内の機器に対して同時に作業する場合にとても面倒になります。
もし、将来的にラックを追加する可能性があれば、予めデータセンターに申し出ておくことで、近隣のラックが幾つか空いている位置のラックを割り当ててくれるかも知れません。
頭に入れておいてください。
ラック間ケーブル
例えば異なるラック間でLANケーブルを這わせたい場合は、いったんラック内のLANケーブルを床下に這わせて、相手側のラックの床下からラック内に持ち上げます。
この作業は顧客側では行えず、必ずデータセンター側に予め依頼して作業してもらう必要があります。
隣接するラックであればその作業も容易ですが、ラックの場所が離れている場合は、データセンターによっては何らかの制約がある場合もあります。
こちらも予め確認しておいたほうがよいでしょう。

 

セキュリティ関連設備を考慮する

データセンターの大きな特徴として、非常に厳しいセキュリティ対策を取り入れて安全を確保している部分があります。

どの様なセキュリティ対策を行っているのかを簡単に紹介しておきます。

入館申請と事前の申込
データセンターは誰でも入れる建物ではなく、必ず受付で止められます。
データセンターに入館できるのは、予め顧客としてデータセンターの入館許可者のリストに登録されている必要があります。
また、リストに登録されている人でも、事前にいつ入館する予定かをデータセンターに伝えて入館の申込みを行っておく必要があります。
共連れ防止ゲート
データセンターのサーバールームの入口にはゲートが設けられ、許可された人しか入れないようになっています。
許可された人であればゲートが開きますが、開いたゲートで許可されていない人が一緒に入り込まないように、必ず一人しか通れない設計のゲートが設置されています。
これを「共連れ防止ゲート」と呼びます。
昔の大きなビルやホテルの入り口などで見かけた「回転扉」のような形状のものが多いです。

エントランスで入館時に通るゲートではここまで厳しくない場合もありますが、サーバールームに入る際に通るゲートではたいてい設置されています。

生体認証
データセンターに自分の指先の指紋や静脈などを登録しておき、サーバールームに入る際には、その認証にパスをしないとゲートが開かない仕組みが取り入れられていたりします。
入館者にカードキーを渡し、そのカードキーでサーバールームに入るデータセンターもありますが、セキュリティの観点から言えば、生体認証の方がよりセキュアです。
ただし、登録した生体情報の判別精度は、どの生体認証方式なのか、どのメーカーの認証システムなのかによって差があり、精度の悪いものだと、チェック時になかなかパスせずイラっとしたりします。
ラック専用カードキー
データセンターのサーバールームは複数の顧客が同時に出入りして作業をするため、当然ですが、すべてのサーバーラックのパネルは施錠されており、自由に開けることはできません。
一般的にはデータセンターの人に依頼して、契約しているラックのパネルの開錠をしてもらいます。
データセンターによっては、カードキーで施錠や開錠のできるラックを導入しているところもあります。
監視カメラ
データセンターのサーバールームは、作業をするために入館した契約者以外は無人で運用しています。
その為、誰も周りにいない状態で過ごすことも多いのですが、その場合でもサーバールーム内には死角を作らないように多くの監視カメラが設置されており、サーバールームに入った人の行動を記録して監視しています。
どこのデータセンターでも必ず導入しているセキュリティ設備です。

 

作業員の滞在設備を考慮する

最近のデータセンターでは、サーバーを安全に運用するための設備だけではなく、入館して作業をする顧客やベンダーの作業員が効率的に作業をおこなえるための設備や、快適に過ごすための設備が充実しています。

レンタルルーム
一般的には、契約したラックに収納する機器は、予め設定が済んだ状態でデータセンターに送り、サーバールーム内での作業を可能な限り少なくするような段取りを組むことが多いですが、作業者がもっと落ち着いた環境で作業できるように、機器を持ち込んで作業するための個室を貸し出してくれるデータセンターもあります。
予め使用する期間をデータセンターに申請しておくことで、その期間内であれば、自由にその部屋に機器を持ち込んで作業をしたり、仮の事務所として使用することができます。
事前にデータセンターに連絡をしておけば、データセンターに発送した機器をその部屋に搬入しておいてもらうことも可能です。
数日掛けてデータセンターに新しく環境を構築する場合などは利用できると便利です。
会議室
データセンター内で人を集めて会議をしたい場合などに備えて、貸出用の会議室を用意しているデータセンターもあります。
契約者の顧客が構築ベンダーと作業の進め方を調整したり、契約者がデータセンターに到着後に一時的な休憩場所として利用するなど、多目的に利用できます。
リラクゼーション設備
データセンターに入館して作業する顧客などがゆっくりと休憩するための各種設備もあります。
サーバールーム内は当然飲食は禁止されています。
よって、飲食などがしたければ、データセンター内に用意されているカフェスペースを使います。
また、リクライニングチェアが設置されていて、仮眠を取ることも可能です。
作業によっては深夜に徹夜で実施することも多々あるため、シャワールームや本格的な仮眠室を用意しているデータセンターもあります。

上記以外にも、サーバールーム内では私物の携帯電話の持ち込みが制限されている場合に、外部と連絡を取る為に専用のPHSを貸し出してくれたり、一時的な外出で使用するための自転車を貸し出してくれるデータセンターもあります。

現地で作業をする場合は、このような設備が用意されていると大変便利です。
 

監視や運用サービスメニューを考慮する

データセンターでは、24時間、365日のあいだ、休むことなくサーバーを管理してくれるのも大きな特徴です。
ただ、当然データセンターのオペレーターがひたすらサーバーラックの前に待機して文字通り監視をしているわけではなく、データセンター側でPingなどによる死活監視を行ったり、定期的な巡回による機器のランプ状態の目視確認などを行い、異常が発生したら個別に対応を実施します。

また、サーバーのデータのバックアップにLTOなどの磁気テープを使用しており、定期的なテープの交換が必要になる場合、交換作業は現地にいないとできないため、データセンターのオペレーターが代わりに実施してくれたりします。

他にも色々とデータセンターのオペレーターに作業を代行してもらうことができますが、これらの作業のどこまでがラックの利用費用に含まれた無償サービスで、どこからが有償のオプションサービスになるかはデータセンターによって異なります。

データセンターにある機器の操作はリモートで行うことが大半であり、実機に触って操作をすることは現地にいるオペレーターにしかできません。
よって、現地のオペレーターに色々な作業を頼むことができて、且つ無償で頼める作業が多いほど、運用はやりやすいということになります。

こちらも必ず事前に確認が必要です。
 

データセンター独自のVPSサービスなどとの相互接続可否も考慮する

多くのデータセンターでは、冒頭でお伝えしたハウジングやホスティングのサービス以外にも、データセンターが独自に構築した仮想基盤上で、顧客が仮想サーバーを切り出して利用するといったVPSなどのサービスも提供していることが多いです。

将来的にハウジングやホスティングで運用している物理的なサーバーだけではなく、データセンターが提供する仮想環境も利用したいとなった場合、ハウジングやホスティングで利用しているネットワークと、VPSなどの仮想環境上のネットワークを相互に接続できないと不便です。

もし将来的にそういった仮想サーバーのサービスを利用する可能性があるなら、ハウジング等で契約しているラックと仮想環境とで相互接続は可能か?、可能な場合は制約などは無いか?を確認しておくことをおススメします。
 
 

最後に

今回の記事では、初めてデータセンターを選定する場合に知っておかないといけない、データセンターにまつわる様々な基礎知識を紹介しました。

最近では、AWSなどのIaaSが広く利用されており、物理サーバーを管理することもずいぶん減りましたが、皆さんが利用するIaaS環境を動かしているのは物理的なサーバーであり、その物理サーバー群は今回紹介したデータセンターで稼働しています。

IT技術者であれば、少なくても今回紹介した内容については、知識として知っておいてほしいと思います。

また、データセンターの選定項目として、建物の災害対策や自然災害のリスクのある立地についても解説しましたが、これはデータセンターを選定するだけではなく、個人の住居を選定する場合でもこの知識は活かせます。
私生活においても知っておいて損のない知識でもあります。

当記事の内容を是非覚えていただき、お仕事や私生活で活用していただけましたら幸いです。

今回は非常に長い記事になりましたら、読んでいただきましてありがとうございます。
それでは皆さまごきげんよう!

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